中国進出の歴史

History of Foray into China

日本と台湾の交流が活発になりつつあった1980年代初頭、旭東ダイカストは台湾の有力ダイカストメーカーへ真空鋳造の技術供与(特許)を行ったところ、 たちまちアメリカから耐圧部品の注文が来るなど脚光を浴びました。
技術供与した製品を日本市場へ導入しようと、自動車用キャブレター部品10万個のほか、金型を数点ほど輸入しましたが、いずれも失敗に終わりました。 10万個の部品は全数検査を要し、十数%の不良品が検出されました。 金型にいたっては半年経っても試作品が届かず、現地確認に行ったところ、日本で金型製作技術を取得した優秀な工場長が他社に移籍してしまいお手上げの始末でした。
教訓として、丸投げでは無理だということです。

折しも台湾の同業者(華僑)がマレーシアやタイへ資本移動を始めているとの情報が入ってきました。
人口2千数百万人の台湾では自動車市場として多くは望めず、生産量の80%弱を自動車に依存しているダイカストに於いてはなおさらです。 変わり身の早い華僑を通じてアジアの生産拠点の変化をいち早く察知できたことは、弊社の中国投資に大きなインパクトを与えるものでした。 期を同じくして中国では改革開放の鐘が鳴り響き、臨海地方の14ヵ所で「経済開発区」の建設が始動しました。

1986年1月、浙江省寧波市人民政府の副市長兼経済開発区・主任から直筆で「企業誘致」の招請状が届きました。
旭東ダイカストの中国展開の歴史は、まさにこの一通の手紙がきっかけで始まりました。 寧波市は日本の遺唐使が上陸した地であり、日本の曹洞宗を布教した道玄和尚が修業した天童寺もあるなど、たいへん親日的なところです。 また春・夏・秋・冬の四季に恵まれた日本に似た土地柄で、料理の美味しさは中国一ともいわれています。
中小企業が海外投資を行う場合の中国の優位性は①漢字で言葉が通ずること。②日本に最も近く、③13億人の大国であることです。
古くから日本との交流が深く相互依存がとても大きいことで、消費が拡大すれば相方の利益が期待できます。

プラザ合意で国際化時代の到来を予見して、海外の投資先を寧波に決めたものの、まだ当時は中国へ進出する企業はほとんどなく、モーターリゼーションのかけらもみられませんでした。 最初の10年間は長江の流れのように焦らず・慌てず、情報収集と人脈づくりに注力し、ダイカストに関しては人民政府から紹介された従業員約500名の専業メーカーの技術指導からはじめました。
日本から送った金型で、試作品の見積もりをさせたところ、日本よりも僅か数%安い程度でスタッフをがっかりさせました。ストップウォッチを片手にコストを積み上げてゆくと、間違いなくその値段でした。 永年続いた競争のない国営企業の低い生産性ならではの実像を見て、資本主義市場経済の競争を生き抜いてきた先進工業国との格差を認識すると同時に、 この国の近代化に日本のダイカスト技術が不可欠であることを確信しました。

1995年、「KDS」旭東圧鋳上海(独資)、「IKD」寧波国合旭東精密圧鋳有限公司(合弁)を同時に設立し、「共利」「共生」を理念に本格的な生産を開始しました。
中国ではマスプロダクション製品を、日本では少量・多品種・短納期・高付加価値製品に特化した国際分業化を目指しました。 中国での経営方針は徹底して現地化を図り、品質管理や技術力を顧客ニーズに合った水準へ一刻も早く高めることでした。 この2社は設立から17年間、2桁成長を続けており、現在では従業員2千数百名、ダイカストマシン146台を保有する、中国のトップクラスの規模と業績を誇っています。 この発展の原動力は日本語のできる極めて優秀な総経理の採用と、設立の前から日本で行ってきた中国からの研修生に対する教育訓練です。 研修生の招聘は100名以上、20年間にも及び、部長級の幹部も多勢輩出しています。

日本の先進的な設備機器を日本式管理手法によって使いこなし、およそ20年近くにわたって高品質・高生産性をもって顧客サービスを行ってきた実績は、とかく品質に問題を抱える中国で注目されています。
また研修事業においては、日本側の(財)日中技能者交流センターと中国側の中国総工会対外職工交流中心が行う派遣事業による人的交流を今後も継続していきます。
旭東ダイカストは「おかげさまで創業80周年 感謝を胸に100周年へ」と銘打って、中国浙江省寧波市寧海県に旭東圧鋳集団新工場の建設を進め、2015年には多数の来賓を迎えて竣工式と80周年記念式典を開催しました。

国際化時代をこれから20年間生き抜くためには「顧客サービス」が第一と考え、限りなく低コストを生み出す方策として「多工程一貫生産」(金型+鋳造+切削加工+メッキ+塗装+物流)によるト-タルコストの低減に乗り出しました。 すでに異業種であるメッキ工場は2009年に設立し量産を行っており、寧海県の優良企業に認定されています。 この建設は敷地面積約1万坪で、部品メーカーと一体となって共同開発を行うことでコストメリットを引き出し、競合他社との差別化を図ります。 これを技術的にサポートするべく、耐圧部品に対しては、高真空鋳造や層流ダイカストを極め、T6処理の安定化を目指すほか、油脂離型剤の実用化推進で金型寿命の3倍増や電動ダイカストマシンの導入で 消費電力70%削減するなど、生産性向上に向けて技術の旭東として地位の確立を図ります。
マグネシウム合金を用いた電動カーエアコン用コンプレッサー部品で量産技術確立を目指したプロジェクトは世界初の技術開発の挑戦であり、経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業・通称サポインに 2012年採用されて以来3ヵ年間の開発が始まっており、自動車の軽量化が求められる昨今、完成に大きな期待が寄せられております。
日本の技術開発と中国の「旭東圧鋳集団」の新たな挑戦によって持続的な発展を図り、従業員の豊かな明日と社会へ貢献を目指します。

地域に根付き、日中の経済・人材・技能交流をさらに加速すべく不退転の姿勢で、相互信頼を基盤に長期展望に立った事業を展開してまいります。各位の御支援をよろしくお願い申し上げます。